ある日、おじいさんはかぶを植えて言いました。
「かぶよ、かぶよ、大きくなれ、甘くなれ。大きくてしっかりしたかぶになあれ。」
かぶはどんどん育って、甘くしっかりして、とても大きくなりました。
おじいさんはかぶを抜きに行きました。
どころがどんなに引っ張っても 、なかなか抜けません。
そこでおばあさんを呼びました。おばあさんはおじいさんを引っ張り、おじいさんはかぶを引っ張りました。
ところがどんなに引っ張っても抜けません。
するとおばあさんは孫娘を呼びました。
孫娘はおばあさんを、おばあさんはおじいさんを、おじい さんはかぶを引っ張りました。
みんなでいっしょに引っ張りましたが、どうしても引っこ抜くことができません。
孫娘は犬を呼びました。
犬は孫娘を、孫娘はおばあさんを、おばあさんはおじいさんを、おじいさんはかぶを引っ張りました。
みんなでいっしょに引っ張りました 。ところがこんども抜くことができませんでした。
犬が猫を呼びました。
猫は犬を、犬は孫娘を、孫娘はおばあさんを、おばあさんはおじいさんを、おじいさんはかぶを引っ張りました。
みんなで力を合わせて引っ張りました。それでも抜けませんでした。
こんどは、猫がねず みを呼びました。
ねずみは猫を、猫は犬を、犬は孫娘を、孫娘はおばあさんを、おばあさんはおじいさんを、おじいさんはかぶを引っ張りました。
みんなでいっしょに引っ張って、とうとうかぶが抜けました。
おばあさんはそのひょうたんのお米を近所の人にくばり、あまったお米を売 って、お金持ちになりました。
さあ、それをねたましく思ったのは、隣の欲深いおばあさんです。
欲深いおばあさんは、庭で遊んでいるスズメに石をぶつけてつかまえると、かわいそうに、そのスズメの腰の骨をむりやり折ってしまいました。
そして、その腰の折れたスズメをか ごに入れると、そのスズメに毎日えさをやりました。
「さあ、はやく良くなって、わたしにひょうたんのタネを持ってくるんだよ」
そして、一ヶ月ほどがたちました。
「もう、そろそろいいだろう」
欲深いおばあさんは、スズメを庭に連れ出すとこういいました。
「 いますぐ飛んでいって、米のなるひょうたんのタネを持ってくるんだよ。さもないと、お前をひねりつぶしてしまうからね」
スズメのキズはまだ治っていませんが、こわくなったスズメは痛いのをガマンして、そのまま飛んでいきました。
それから何日かたったある日の夕方、毎日庭先でス ズメが帰ってくるのを待っている欲深いおばあさんの前に、あのスズメが現れました。
「やれやれ、やっときたね」
欲深いおばあさんは、スズメの落としていったひょうたんのタネを拾うと、それを庭にまきました。
そのひょうたんのタネはどんどん大きくなって、秋には立派なひ ょうたんがたくさん実りました。
「よしよし、これでわたしも金持ちになれるよ」
おばあさんが包丁を持ってきて、一番大きなひょうたんの実を割ってみました。
すると中から出てきたのはお米ではなく、毒ヘビやムカデやハチだったのです。
「ひぇーーー!」
他 のひょうたんからも毒ヘビやムカデやハチなどがたくさん出てきて、欲深いおばあさんに襲いかかったという事です。
おじいさんとおばあさんは、おわんとはしと針を一寸法師に渡しました。「これで都へ行きなさい。」
一寸法師は、はりの刀を腰にさし、おわんの船にのって、はしをかいにし て川をのぼっていきました。
都に着くと、一寸法師は大臣の家にいきました。
「私を家来にしてください。」
大臣は、一寸法師がたいそう小さいので、びっくりしましたが、とても元気がいいので、家来にすることにしました。
ある日、大臣の娘のお姫様がお寺にお参りに行く ことになりました。
「お参りの帰り道に鬼にあったら、どうしましょう。」
ところが、一寸法師は鬼のおなかの中を、針の刀でちくちくと刺したものだから、鬼はたいへんです。
「いてててて。こりゃ、おなかが痛くてかなわん。」
鬼は、一寸法師を吐き出すと、大急ぎで逃げ ていきました。
お姫様は大喜びです。「ありがとう、一寸法師。あなたは小さいけれど、とても勇気と知恵があるのね。」
そして、ふとあたりをみると、なんでも願いがかなうという打ち出のこづちが落ちていました。
「どうか、この姫と結婚しておくれ。」
一寸法師は、おじ いさんとおばあさんを都に呼び、お姫様と結婚して、幸せに暮らしました。
おしまい
「あら、こんなところに打ち出のこづちが落ちているわ。あの鬼が落として行ったのね。」
お姫様はそのこづちを拾い上げました。そして、一寸法師に言いました。
「このこづちをふると、な んでも願いがかなうといいます。あなたの願いをかなえてあげましょう。」
そこで、一寸法師はお姫様にお願いしました。
「お姫様、私の背を高くしてください。」
お姫様がこづちをふると、一寸法師はあっという間に背の高いりっぱな若者になりました。
大臣は、この話を聞 くと、大喜びして一寸法師に言いました。
むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんとおばあさんには、子供がいなかったので、神様に「子供をください。」とお祈りしました。
すると、とても小さな男の子が生まれました。
小指く らいの背丈しかありませんでしたから、一寸法師と名づけられました。小さいけれど、おじいさんとおばあさんが大事に育てたので、とても元気な若者に成長しました。
ある日、一寸法師はおじいさんとおばあさんに言いました。
「私は、都に行ってえらくなりたいのです。どうか、都へ行かせ てください。」
むかし、おとこ、うゐかうぶりして、ならの京、かすがのさとに、しるよしゝて、かりにいにけり。
そのさとに、いとなまめいたるをむなはらからすみけり。このおとこかいまみてけり。おもほえずふるさとにいとはしたなくてありければ、心地まどひにけり。
おとこの きたりけるかりぎぬのすそをきりて、うたをかきてやる。そのおとこ、しのぶずりのかりぎぬをなむきたりける。かすがのゝわかむらさきのすり衣しのぶの
みだれかぎりしられずとなむをいづきていひやりける。ついでおもしろきことゝもやおもひけむ。
みちのくのしのぶもぢすりたれゆへにみ だれそめにし我ならなくにといふ哥のこゝろばへ也。むかし人は、かくいちはやき、みやびをなむしける。
むかし、おとこ、いとうるはしきともありけり。かた時さらずあひおもひけるを、人のくにへいきけるを、いとあはれと思て、わかれにけり。
月日へてをこせたるふみに、あさましくえた いめんせで、月日のへにけること、わすれやしたまひにけむといたくおもひわびてなむ侍。
世中の人の心は、めかるればわすれぬべきものにこそあれめ、といへりければ、よみてやる。
めかるともおもほえなくにわすらるゝ時しなければおもかげにたつ
むかし、おとこ、ねむごろにいか でと思女ありけり。されど、このおとこをあだなりときゝて、つれなさのみまさりつゝいへる。
おほぬさのひくてあまたになりぬれば思へどえこそたのまざりけれ返し、おとこ、おほぬさと名にこそたてれながれてもつゐによるせはありといふものを